2013年のA7では世界初の64bitアーキテクチャがスマートフォン向けチップに採用され、業界の流れを大きく変えました。続くA8・A9では省電力性能と表現力がそれぞれ強化され、Touch IDや3D Touch、Live Photosといった新しい体験を支える基盤となりました。
A7 64bit化の衝撃
2013年のiPhone 5sに搭載されたA7は、スマートフォン向けチップとして世界初の64bitアーキテクチャを採用したことで、業界に大きな衝撃を与えました。多くの競合メーカーが32bit設計の延長で開発を進めていた時期に、Appleが先行して64bit化に踏み切ったことは、その後のスマートフォンチップ全体の方向性を変えたとも評価されています。
また、A7と同時に搭載された「Secure Enclave」と呼ばれる専用セキュリティ領域は、Touch IDによる指紋認証を支える基盤となり、生体認証時代の幕開けにつながりました。
A8 省電力性能の進化
2014年のiPhone 6/6 Plusに搭載されたA8は、20nmプロセスへの微細化により、性能向上と省電力化を両立しました。CPU性能は前世代比で約25%、GPU性能は約50%向上したとされており、画面サイズの大型化と相まって、動画やゲームを大画面で楽しむ体験を支える基盤となりました。
A8世代では、HEVC(高効率動画コーデック)の処理能力強化など、メディア体験に関わる進化も目立ちました。Apple Payに必要なセキュリティ機能の拡充も、この世代から本格化していきます。
A9 Live Photosの登場
2015年のiPhone 6s/6s Plusに搭載されたA9では、3D Touch(感圧タッチ)やLive Photos(短い動画付き写真)など、新しい操作・撮影体験を支える性能が実装されました。CPU性能は前世代比で約70%、GPU性能は約90%向上したとされ、ゲームや高度なグラフィックを扱うアプリでの体感差が大きく広がった世代です。
A9はTSMC(台湾のチップ製造会社)とSamsungの2社で製造されたことでも知られ、製造プロセスの違いがバッテリー持ちにわずかな差を生んだという話題もありました。